Edifier PCスピーカー R800TCの改造 その1

とんでもないアンプだった!

木目及び価格につられて、買ったR800TCですが、当初の目的は、YAMAHAのサラウンドプロセッサアンプ(DSP-AX640)のリア用として使っていましたが、リア用にJBLのトールボーイスピーカーを買ったので、あまり使わなくなったので、友人にあげました。
しかし、友人から「音がヘン」という指摘を受けて、訪ねて聞いたところ、確かにピアノの高音が異常に歪んでいる。(ピアノ線を叩いている音ではなく、弾いているような音・・、ピアノって弦楽器だったっけ?というような音でした)。

そこで、改造したYAMAHAのYST-M8を人質にして持って帰って調べました。

まず、アンプから見てみようと蓋を開けて(このエンクロージャーってモノコックだろうか?板を止めるネジがない・・。と思ったら、単なる化粧パネル貼り付けでした。でも、化粧パネルを剥がさないとエンクロージャーを分解できないですね。)基板を外してみたところ、すごく簡単な回路基板(図1)。
これだったら回路も簡単に解析できると思って、早速回路を起こしてみました。なお、回路図はリバースエンジニアリングに引っ掛かるので公開しませんが、少々回路をいじった人であれば簡単に起こせます。


図1.アンプ基板

起こしてみて、ビックリ。
S.BASS回路って、低域をブーストするのではなく、低域をあらかじめ絞っていて、S.BASSのVRでノーマル(少しはブーストするかも)に戻す方法だった。
あと、パワーアンプICのコンデンサも推奨以下のモノが付いているし、放熱器もアルミアングル1枚だけ・・。
木箱にお金をかけた為、部品的に手を抜かれた感じな回路です。

とりあえず、周波数特性を測ってみました。
と、いっても正式な測定器も持っていないので、ファンクションジェネレータ+バルボル(交流電圧計)で測定してみました。
FGの出力と、回路の入力ボリュームで出力が4Ω純抵抗負荷で1KHz1Vとなるように調整してから、周波数を可変しての測定です。

S.BASSのVRをセンター(クリックするところ)にあわせて測定した特性がピンクのラインです。はっきり言って、小学校の構内放送用のアンプですね(今はもっといいかも)。カットオフは500Hzくらいで徐々に落ちていきます。30Hz付近だと-20dBも落ちています。

そこで、回路に手を加えて、S.BASS回路をバイパスするようにしました。(図2)
すると、周波数特性はだいぶん改善しました(のライン)。カットオフはおよそ100Hz。低域では+10dB程度の特性改善がみられました。

おそらく、この改善は、S.BASSのVRを右にいっぱい回したのと同じ事だと思います。


図2.S.BASS回路のバイパス

全体に高域が若干持ち上がっていますが、なにか他の要素でしょう。
追って解析しましょう。

しかし、この改造では、S.BASSのVRを廻したのと変わりません。他に、低域の再生に関係あるとすれば、カップリングコンデンサか、NFBのバイパスコンデンサです。

みると、ここに10uFが使われています。これだと、63Hz付近から徐々NFBが多くなりアンプのゲインが落ちていきます。(内部に30Ωが直列に入っている)

確かに、このスピーカーでは50Hzは再生できませんが、せめてアンプだけはフラットな特性にしたい、というのが希望なので、このコンデンサを100u/16Vのものに変更します。

これにより、時定数は、30msとなり、カットオフが約5Hz。
可聴帯域外へ追い出すことにしました。

 


図3.NFBのバイパスコンデンサ

とりあえず、低域の問題はやや改善されたと思いますので、また特性を測ってみます。(とりあえず1KHz以下の特性のみ)

さらに改善されたみたいです。カットオフは約40Hzになりました。

まだまだ改善する余地があるようですが、とりあえずここで音を出してみることにします。

低域はかなり良く出るようになりました。

まだ、高音がおかしいままです。


アンプ自体は、確かに高域で若干のレベル上げが見られますが、この程度では耳障りな高音になるはずがありません。

そこで、今度はスピーカーを疑ってみました。


図4.スピーカーネットワーク

案の定、コンデンサ(2.2u/50V Non-poler)1個だけの簡単なネットワークです。
もしかしたらウーファーって本当はフルレンジなんでは?
とりあえず、ウーファーだと思って、インダクタを追加しましょう。

ツイーターは8Ωなので、クロスオーバー周波数はおよそ9000Hzです。よって70uH(ウーファーは4Ω)のインダクタを直列に追加すればいいので、(本当は空芯コイルを自作すればいいのですが、)ここは適当に手持ちのインダクタで・・・・。と、思ったら68uHが無い!100uH近辺もないし、あったのが220uH。

とりあえず今回はウーファーの高域をカットするのが目的なので、仕方なく220uHのマイクロインダクタを追加しました。図4、図5


図5.追加したマイクロインダクタ

ウーファーのカットオフ周波数は、およそ3000Hzになります。つまり、3000Hz~9000Hzは音圧レベルが落ちることになりますが、気にしないで、聞いてみましょう。

う~ん。ほぼOKです。高域のシャリシャリ感はなくなりました。
これって、やはりウーファーではなく、フルレンジじゃないのかな?(実はとんでもない事実が・・その2へ)
スピーカの正体がわからないので、何とも言えませんが、カットオフを低いところへ持っていけばいいかも知れません。
そうすると、ツイーターの2.2uFをもうすこし大きくして5000Hzあたりでクロスオーバーさせればいいかも・・・。

とりあえず部品買ってこようっと。